「祈さん……!」
全てがスローモーションのようだった。
警察や神成が追いかけてきてくれる迄、実際はそんなには掛かっていないと思う。
だけど、全てが重く、遅く感じた。
「慧くんは!?」
血相を変えて、部屋の中に飛び込んできた神成を見て、私は泣き崩れた。
「いない……慧、が、……いないの……どうしよう!?」
堰を切ったように、後から後から、抑えることのできない感情が、波のように押し寄せてきて、ぼろぼろと涙が落ちていく。
心を。
心臓を、えぐられたようだった。
「まずは自分を制して、直ぐに捜さないと……」
私の肩を支え、神成が言うけれど。
「どうしよう、、どうしよう、、、どうしよう、、、、」
私はそれしか言えないまま、血の気がすっかり引いていくのを感じていた。
ただただ途方に暮れて、身体の中心にぽっかりと空いた大きな穴に、圧倒されて、再開した震えが止まらなくなっていた。


