玄関前に辿り着いた時には。
内臓がひっくり返っているのではという位、全身に緊張と震えが走っていて。
息を切らしながら、心臓のバクバクが、そのまま伝わっている手を伸ばして、ドアノブに触った。
鍵はあえて出さずに。
そっと。
銀色のノブを、回した。
力の入らない手で。
本当に、そっと。
そして。
全身の力を込めて、願った。
どうか、鍵が閉まっているように、と。
開くことがないように、と。
「――――」
だが、現実はむごい。
現実は、冷たい。
カチャという音すらも、冷たく響く。
願いとは裏腹に、ドアノブは、いとも簡単に、回った。


