頼れる誰かが居るという安心感は、心地良い。
一人きりで、今ここに立っていたとしたら、私は途方に暮れていただろう。
ぼろぼろになって、どうなっていたか分からない。
ここで、木戸に襲われて、あのままになっていたとしたら、自分は今度こそ、自ら命を絶ったかもしれない。
なのに、自分は、木戸を目の前にしながら、もう恐怖を感じていなかった。
傍に居る神成が、守ってくれることを、確信したからだ。
神成は、私の命を、もう、何度、救ってくれたのだろう。
「神成先生って、人殴れたんですね……」
パトカーのサイレンを耳にしながら、伸びている木戸を見て、ぽそ、と呟くと、神成はふ、と笑った。
「僕、一応医者だから。どこをどうすればどうなるかくらいは、知ってるよ。」
「…………」
「そんな目で見ないでくれる。役に立ったんだからさ。」
「……っふふ…」
「――――」
「?どうかしました?」
「今――「大丈夫ですか!?何があったんですか!?」」
珍しい程、穏やかな二人の会話は、駆け付けた警察官によって、遮られた。
「通報したのは僕です。さっき――」
神成が、通りがかった際、私が襲われそうになっていた事を説明してくれ、私自身も日ごろから様々な嫌がらせを受けていたという点を伝える。


