レオニスの泪



「お節介かなと思ったんですけど……そんなので良かったら、また作りますけど……」



調子に乗って、ついでしゃばった事を口走り、直ぐにしまったと思った。


《え?いいの?僕も料理はたまにするけど、中々暇がなくて、こういう時間が掛かるのはしたことないんだよね。身に染みる。》


だけど、神成もそんな風に言ってくれるものだから、次の仕事が見つかるまでの間くらいは、出しゃばっても良いかと思い直した。

「良いですよ。」


ふふ、と自然に零れた自分の笑みに驚く。

心地良く感じるこの人との会話に慣れてしまった自分は、ぬるま湯に浸かっているようで。

同時に、決してこの人は、自分のものにはならないだろうという事実が、痛く胸に突き刺さる。


「――ねぇ、先生。今から、少し会えませんか。」


だから、あと少しだから。


《――え?》

「少しだけで良いんです。今日は水曜日じゃないけど……」


我が儘を言っても、許されるんじゃないかって。


《……良いよ。会いに行くよ。》


顔を見るだけで、それだけで、良いから。


「いえ。会いに行かせてください。」


そうしたら、直ぐに帰るから。

ただ、一人で。

一人の女として、貴方に会いに行きたいと、思ったの。