レオニスの泪


夜遅くなってから、携帯が震えた。

慧は、和室で二つの布団に跨って大の字になって寝ており、私はお風呂を終えて、テレビのチャンネルをころころと回していた。

仕事を辞めてから、夜にやる家事が激減した。
次の日にやれば十分間に合う、というわけで、私は『自分の為の時間』を存分に取り分けられていた。

メールかと思って直ぐに取らないでいたら、長く鳴る為、電話だと悟る。

着信の相手を見てみて、ドキッとした。

「も、もしもし」

声がひっくり返らないように、咳払いしてから出る。

《もしもし、神成です。こんばんは。》

「あ、はい、こんばんは。」

《急に電話してごめんね。今大丈夫?》

「あ、えっと、はい。」


あたふたしながら、会話する私と、落ち着きすぎている神成。

滑稽な組み合わせだ。


何かクレームかと、内心破裂してしまいそうな程、緊張していた。


《部屋の掃除だけじゃなくて、食事まで作ってくれてありがとう。》


だから、拍子抜けして。


そう言ってもらえた事を素直に嬉しく思った。