レオニスの泪








17時には、外はもう真っ暗。

自転車のライトを点けても、車が通らない道路は黒く、見えにくい。

数メートル置きに立っている街灯だけが、なんとなく心の支えだ。

空には一番星が輝く。



「けーぃ」


後ろに掛かる体重は、毎日毎日少しずつ重くなっていく。


「なーにー?」


私の呼びかけに、慧が応える。

「最近、何の遊びが一番好きなのー?」
「えー??」

風に乗せて訊ねるけど、私は前を向いているから、後ろにいる慧は聞こえにくく、聞き返す。

「最近、何で遊ぶのが一番好きー?」

信号が赤になって、停止したのと同時に、背後を向くと、慧と目が合った。


「んーーー、さいきんは忙しくって、遊ぶ時間はあんまりないんだよなぁ」

慧が難しい顔をしてそう答えたのを微笑ましく見てから、再び前を向く。


「そっか。慧も忙しいんだ。」
「うん。けっこう」


慧に気付かれないように、小さく笑いながら。



ー何か、そういう遊びなのかもしれない。


安堵していた。


先生も言っていた。
少し、気になっただけだって。
大したことじゃない。


今は、自分のことの方が、大変だ。

慧は、大丈夫だ。