「すいません、お忙しい所…」
教室から出て廊下の方へと前を歩いていく先生の後を付いて行く。
すまなさそうに気遣う先生に、いいえとだけ言った。
内心は、これから何が話されるのかの方が気になって仕方がなく、落ち着かなかった。
ーまた、何かしちゃったのかな。
以前、友達と喧嘩してしまった時の事が記憶に上る。
子供の熱気で温められていた教室とは違い、薄暗い廊下はヒヤリとしていた。
低い水道の蛇口が、5つ並んでいる中、一つだけが、上を向いている。
「あの…少し気になる程度のお話しなんですけれど。」
近くに誰もいないのを確認するかのように、左右を見てから、先生は振り返った。
「ー近頃、慧くんが、いなくなることが、あるんです。」
「…え?…」
思ってもみなかったことを言われ、私は目を見開く。
「それは、どういう…?」
「別に、抜け出している、という訳ではないんですけど。自由時間になった時、外に遊びに行く子と中で遊ぶ子といますけど、慧くんは以前なら、外でよくサッカーをしていたんです。」
それは、慧から話を聞いているからよく知っている。ちなみに服も汚してくる。
「なのに、最近、どの子とも、あまり一緒にいないんです。一人で、どこかへ行ってしまうんですね。目で追ってみると、まぁ…柵の隅の方にいたりするんです。」
先生は一体何を言おうとしているのだろう。
さっきから何度も考えているが、見えてこない。


