青い澄んだ空にぽっかりと白い月が浮かぶ。
肌寒い季節は、明るくなるのが遅くて、暗くなるのも早くて。
木々から葉っぱがなくなるから。
春より夏より秋より。
寂しくなる。
一人だってことが、辛くなる。
誰かに寄りかかりたい思いが強くなる。
だけど誰でもいいわけじゃなくて。
ー温度が欲しい。
「っ…!」
思い出した様に、震えが始まり、纏わり付いた温もりに気付く。
それが、木戸からのものだという事に、激しい嫌悪感が生まれて、私は振り払うように立ち上がった。
ーシャワー浴びなきゃ…
早く、落とさないと。
早く。
急かされるように、何かに取り憑かれたかのように、自転車に乗って、走り出す。
どんなに風を切っても、消えない香りが身体を蝕んでいくようで、見えない恐怖に駆られて、更にスピードを上げた。


