レオニスの泪


「何を言っても、貴女を引き止めることはできなさそうね。」


ややあってから、金森がそう言って、溜め息を吐いた。
顔を上げると、複雑な表情の金森と目が合う。


「…折角、長いお休みも頂いたのに、こんな結果になって、本当にごめんなさい。」

これじゃまるで、辞職前の有給消化みたいになってしまったと思うと、体裁も悪い気がした。


「謝る事じゃないわ。ーーー分かった。私から上には報告します。」


金森の言葉に、私は目を見開く。

「いいんですか?」

「駄目って言ったら、葉山さんの意思は変わるの?」


少し非難めいた口調になった金森に、私はハッとして、俯向く。


「……変わり、そうにありません…」


そう言うと、金森はフッと笑った。


「でしょう?なら仕方ないじゃない。」


上司の優しさに、同調するのも、気が引けて。


「…ありがとうございます」


私はその場で、再び頭を下げた。


金森は努めて明るく振る舞ってくれ、改めて挨拶に来ると私が申し出ると、今日の菓子折りで十分だとー暗にわざわざ来なくていいー配慮してくれる。




「あのさ、葉山さん。」




帰り際、背を向けた私に。




「もし、戻りたかったら、言ってくれれば、推薦するわよ。」


金森はそう言って、だからいつでもここに戻っておいで、と付け加えた。