レオニスの泪


「…貴女は何も悪くない、、そうでしょう?…辞めないで、木戸さんにされたことを会社に訴える事だって出来るのよ??」


金森の視線から逃げていたから、金森がどんな表情でそう言ったのかは分からないけれど、言い方に悔しさとそして、怒りー恐らく木戸へ向けたーが滲んでいた。


「ご迷惑は承知ですが…ーーこれが、一番良い方法だと思うので…」

「迷惑だなんてことはないの。ただ…勿体無いでしょう。あんな男のせいで、こんな風に…」




木戸と関わらなければ良い。
木戸が居ない所に行けば良い。
自分が悪くなくても、仕方がないのだ。
自分には力がないのだから。


逃げだと言われても。


「もう…闘う力なんて、残ってないんです。」


だから、逃げる。

これからの生活がどうとか、そういう不安要素は数え挙げればキリがない。

だけど、今が、もう、耐えられないから。



「辞めさせて…ください…お願いします…」


頭を下げた。



世の中に、私の代わりなんて、幾らでもいる。

だけど、慧を育てて行けるのは、私しかいない。

そんな私は、死んだらいけない。

ここで、死ぬわけにはいかない。