自分の言い訳じみた言い訳。
格好悪過ぎて、もう言うことすらなくなった。
結局神成の視線からも逃げて、俯向く。


そこに、再び、溜め息。

神成のそれは、自身の苛立ちを逃がすかのようなきらいがあった。


「君は、僕の答えを聞いてない。」


そう言って、私の足を静かに床に戻す。



「ごめん、って言ったじゃないですか……」





ーそんなことは。わかってる。知っている。



顔を上げる勇気もなく、力もなく、項垂れ、不貞腐っているふりが精一杯の私は思う。


走って逃げて。

神成は、話がしたいと言ったのに。

答える時間を、ちゃんと与えなかった。

それは、拒まれる事が、怖かったから。



「…祈さんが言うように、僕が祈さんに固執しているのは確かだ。患者相手にここまですべきじゃない。でも僕は、好きだとか、愛してるとか、そういう感覚は、自分の中から失くなったと思ってる。けど、今回みたいなことがあると心配で、1日中何も手につかなくなる。あの夜、ごめんて言ったのはー」


ちら、と見上げると、神成の顔は少し苦しげに歪んでいた。



「この気持ちに名前を付ける権利が僕にはないのに、曖昧な態度を取り続けたことに対してだよ。」