カミングアウトしてしまったのに。
なのに、神成はここにいる。
神成が私に構う意味が分からない。
「先生は…もう、私のなんでもないじゃないですか。なんでもない人に、頼る方がおかしいじゃないですか。信頼して頼ったとして、もしも、拒まれたら…ショックで立ち直れないことだってあります。それに…先生が私の担当医だったとしたって、普通こんなことしてくれない。でも、先生は私に下心がある訳じゃない。そうでしょう?」
神成は。
勇吾のように、熱い視線じゃない。
木戸のように、舐めるような視線で、私を見ない。
森のように、好奇の視線を送ってこない。
神成の目は、いつも静まりかえっていて、その先に何を見ているのか、わからない。
なのに、私を放っておいてくれない。
「…ごめんって言ったじゃないですか。それは、、もう終わりってことですよね?私も、こんな状態で、先生と普通にカウンセリングなんかできません。頼ったりなんかできません…」
神成の瞳は、今も、静かだ。
けれど、じっと見つめていると、吸い込まれてしまいそうに、深い。


