チッチッチッチッ
静まり返った深夜。
部屋の時計の針の音がやけに大きく響く。
そして、タオルを濡らした辺りから、更に機嫌悪いオーラが強くなった神成の綺麗な目が、私の足に注がれている。
それを見ている自分が、顔を逸らす事で、なんとか恥が逃げるよう試みるが、上手く行く筈がない。
すごく逃げたいけど、それが許されない雰囲気。
息を吐(つ)きたいけど、吐けない。
息を吸いたいけど、吸えない。
よって、無意識に息が止まる。
冷や汗は止まらない。
この消毒作業が、一生続くみたいに長く感じる。
「………祈さんは、どうして、頼らないの?」
沈黙を破り。
絆創膏を貼り終えた所で、神成が私を見上げて問う。
「……え…」
息ができなかったせいで、間抜けな声しか出せない私。
「あの男、ここに来たの?」
神成の表情はいつも笑っているみたいで、何を考えているのか読み取れない。
でも、目の前の神成は、はっきり怒っている。


