レオニスの泪




玄関も、居間も、電気が点けっ放しだ。


「お邪魔します。」


恐い神成は、それでも律儀に挨拶をして中に入り、私を居間の椅子に座らせる。



「薬とタオルある?」
「あ、はい」

取りに行こうとして、足に力を入れる前に、肩を押して戻された。

「どこ?」


畏縮。まさに今の私を表す二文字だ。


「その…水色の戸棚の、二番目の引き出しに薬があって…タオルはそこに出てます…」


神成は黙ってそこを開くと、消毒液と絆創膏を取り出して、テーブルの上に置き、タオルを洗面所で濡らしてから、私の前に跪(ひざまず)く。

そして、私の足をタオルで拭き始めた。

「じっ!!自分でっ…できます…」
「黙って。」

口調や態度とは裏腹に、優し過ぎる丁寧な拭い方に、いても立ってもいられなくなる。

非常に恥ずかしい。

これはあれか。

前回、トチ狂って、告白した私への、罰なのか。