「手当て。」
「え、いや、自分でできますっ、うわぁ」
神成は、ムスッとした態度のまま、断ろうとする私の右手首を掴んだかと思うと、次の瞬間、ひょいと抱え上げた。
ドッ、どころじゃない。ばくばくばくばく、心臓が暴れて暴れて。
どう考えても、伝わってしまっているだろう。
ー恥ずかし過ぎる。
私はつい先週、この人の事が好きだなんて、口走ってしまったのだ。
「自分で歩けます…」
「自分で歩いて、怪我したんでしょう。裸足だから。」
「………」
アパートの階段を上る神成に、軽い抵抗を見せたものの、正論で対抗されてまた撃沈。
「鍵も開けっ放しで…本当に呆れる。」
玄関前で、予想していた以上に冷たい言葉で怒られて。
ーつ、冷た過ぎないか??呆れるって、、呆れるって、、、何よーーー!!元々はあんたがポスティングしたのが始まりなのよ!!!!
と言ってやりたいのに、ドアノブを回す神成にこんなにびびっている自分が信じられない。
だって、こんな神成を今まで見たことがない。
二重人格とかなのか?!
兎に角信じられない。けど恐い。


