レオニスの泪


「あ…えっと…なんで…」


なんでここにいるのか、とか。

どうしてチャルダーマンのハンカチを持ってたのか、とか。

先週で私達の奇妙な関係は終わりを告げたのではないのか、とか。


訊きたいことは山程あるのに、言葉にならない。

今の神成には、威圧的な空気すら感じさせる何かがあって、そもそもどうして私がこんなに不利な立場なのかが分からない。


「ー怪我してるの?」

私の『なんで』は完全にスルーされて、神成は更に眉間に皺を寄せて、しゃがみこみ、私の足を見る。


「いえ、してないです…いたっ」


これ以上怒られる要素を見せてしまってはいけないと、咄嗟に嘘を吐いたのに、神成が傷口に触れたせいで、あえなく撃沈。


「………」


そして、沈黙。

だから。
どうして、怒っているような顔をして、私を見るのだ。