夜になっても雨は止む気配を見せず、それどころか、風まで強くなってきて、ベランダの植木をむしり取ろうとする。
「ママぁ、怖いぃ…」
布団に入った慧が、ガタガタと窓が揺れる度に不安がって、添い寝している私の手をぎゅっと掴み、放さない。
「大丈夫だよ。ママ、ここにいるからね。」
水曜の夜だけれど、別段予定はないのだ。
神成は来ない。
先週で、密かに行われていた夜のカウンセリングは終わった。
明日も休みだし、洗濯機は明日にして、このまま一緒に微睡んで、眠ってしまったって一向に構わない。
過呼吸は、木戸が訪ねてきた夜、少しだけ出た程度で、治っている。
落ち着いている。
神成の事も考えないで、自分のことも抜きにして、慧とだけ向き合う。
これが正しい、本来あるべき自分の姿だ。
自分の事にかまける暇も、ましてや、恋なんてしてる余裕もない。
明日どうやって生きるか。
慧をどうやって育てていくか。
それで精一杯。
それが私の今までの人生だった。全てだった。
軌道修正できた。
これで良い。
それで良い。


