保育所に着くと、お迎えの車で道路がいっぱいになっていた。

結局うだうだと自分の気持ちの処理に時間がかかっていたせいで、仕事に行っている時と同じ時間のお迎えになってしまった。

そして、この時間はラッシュなのだ。



「ママぁ、ちゃっぷちゃっぷ、らんらん♪」



こんな雨でも、遊び道具に変えてしまう息子を微笑ましく思いつつ、車から守ってやりながら、家までの道のりを歩く。

帰りの公園は見ないようにして、意識しないよう心掛けたが、結局それ自体が気を取られている事になるのに、と呆れた。


「きゃ…」
「慧っ」

その隙に、慧が水たまりに足を取られ、見事に転ぶ。


「うぅ~」
「大丈夫??」


直ぐに抱き起こしてみると、血こそ出てないものの、びしょ濡れになってしまった慧は、必死で涙を堪えている。


「えらいえらい、泣かないなんて、お兄さんになったんだねぇ。」

言いつつ、ハンカチを上着ポケットから探るが見つからず、下に着ているカーディガンのポケットまで探ってみると、カチ、と当たる感触がして、思わず手にとって見つめる。


「あ、、、」


公園で泣きじゃくったあの日、神成から借りたハンカチが、ポケットに入れられっ放しだった為に、固くなってこんにちはをしている。


ー忘れてた!


血の気が引いていく音がする。大粒の雨の中だというのに、私はそこで静止した。