午後になるにつれて、雨は土砂降りになった。

僅かな間でも小降りにならないか、と考えていたが、慧を迎えに行く際も雨は弱まる気配を見せず、仕方なくカッパを着て、小さなカッパと長靴を入れたビニール袋を持ち、歩きで保育所に向かった。

途中、あの公園の傍を通って、いつもしてしまう癖みたいに、チラとまた見てしまった。こんな天気の下、遊ぶ子なんている筈もなく、公園はがらんとしていた。
それは、真夜中のそれと似ていて、思わず溜め息が漏れる。

こんな雨の中、神成は、私を待っていたことがあった。
傘も差さずに。
ただ、真っ黒な空を見て。
それが儚くて、消えてしまいそうで、だけどーなんだかキレイだった。
神成の大きな瞳の先には、誰が見えているのか、知らないけど。
その大事な人は、きっともう、神成の前に居ない。
だけど、神成は、その人を、今でも待っているんだ。

その、入ってはいけない領域に、自分が入ってしまった。
それが恥ずかしい。

自分は、シングルマザーだ。
世間からも、お荷物扱いされる存在だ。
そんな私ーただの、派遣の、食堂のおばさんで、しかももうすぐクビになるかもしれず、心に病まで抱えていて、面倒以外の何物でもないーが、仮にも医者である男性に想いを寄せて、更には伝えて、あわよくば通じて欲しいと願うなんて。
おこがましいにも程がある。

身の程知らずだ。