それより何より、自分は、なんて思った?

助けられて、馬鹿みたいって。

そうじゃなくて。


「本物の…馬鹿だ…」


死んで良いって?
全部から解放されたいって?

点、点、と階段の5段目と7段目に落ちた花弁を目で捉え、そして玄関まで、頼りない足取りで上がる。

玄関前に置かれた花束を、唇を血が出る程強く噛みながら、見つめた。

視界に膜がかかり、黄色もコンクリートの灰色も玄関の黒も、全てぐちゃぐちゃに混ざる。


「くっ…う…」


痛い。

痛いの、血が出て。

初めて会った時、神成が言ったみたいに。

私は、私の心は血だらけなんだ。

私は、弱くないと思ってた。
病気になんか負けないって。
そこまで病んでないって。

なのに、さっき、そして今。

自分は死にたいと願った。

願ってしまった。

ある意味それは、自分の中での終わりだ。


責任、責任、責任に追われて。
先が見えない。

昨日貰った神成の体温は、木戸によって塗り替えられてしまったし、神成とはもう終わった。

私の救いは断たれたように感じた。

自分は、人間として、駄目なんだと思った。