どうしていいかわからない僕は、途方に暮れたように、そこに突っ立っているしか出来なくて。
触れればまた拒絶されるのが怖くて、声を掛けようにも、何と言えば良いのか思い付かない。
さっき彼女の為だと思って発した言葉で、僕は明らかに朱李を傷付けた。
「……嫌いになった?」
どれくらい経ったろう。
漏れる嗚咽が段々と小さくなって、沈黙が流れ、僕は何かがおぶさっているかのように身体が重かった。
それでも同じ姿勢を取り続けていたせいで、あちこちが痺れてきた頃。
「………私が、そんな女だって知って…幻滅した?」
鼻声で、涙まじりに、顔を見せない朱李が、突然僕に訊ねた。
「…そんなわけないでしょ。僕は…」
近づいて欲しくないと、張られていた頑なな空気が和らいだのが分かって、ゆっくり僕は朱李に近付く。
「僕は、朱李の全部を知りたい。」
どんな部分でも。
そう伝えると、朱李はぐしゃぐしゃの顔を上げて、驚いたように僕を見た。
そんな彼女を抱き寄せると、朱李は僕の首に手を回して、またふにゃふにゃと泣いた。


