「伊織、何を聞いたの。」
「…朱李」
なんとかもう一度近づこうとするが、朱李は警戒心の強い野良猫の様に僕から距離を取る。
「頭、おかしいって?」
「そうじゃないー」
「じゃ、何?死んでるって?何度も死のうとしてるって?」
死、というワードにギクリとして身を固めると、朱李は自嘲気味に笑った。
「皆もね?言うの。病院行けって。まるで私が異常みたいに。」
笑いながらも、その目尻には段々と涙が溜まり始める。
「伊織もそう言うの…」
やがて、絶望したかのようにそう言うと、朱李は玄関に力なくしゃがみこみ、膝を抱えて、そこに顔を埋めた。


