今にも泣き出しそうな顔で、朱李は縮こまった。


曇り空で、灰色に染まる風景の中。


僕はベンチからゆっくり立ち上がると、朱李と向き合った。


小柄な彼女は俯いて。


「…じゃ、これで…」


別れの言葉を言い掛けたー




「僕は器用な方じゃないから、時間を作るのも苦手で、放っておくことも多いと思う。それでも良い?」



ダークブラウンの髪に向かって、そう訊ねると、驚いた彼女が一気に上に向く。




「ーえ?」



涙が混じった目がきらきらと光を弾いて、素直に綺麗だと思った。



「それでも良い?」



もう一度繰り返せば、漸く意味を悟った朱李の目から、一旦は止まった涙がみるみる内に溜まって、ボロリと溢れた。



「はい…。」



子供のように泣き出した彼女を腕の中に招き入れると、朱李は絞り出すような声でー


「好きです…先輩…」



そう言って、僕の背中をぎゅっと掴んだ。