仕方なく起き上がれば、彼女は医学書の開いていた箇所にスピンを挟み、僕に手渡した。



「……どうして僕に構うの。」


眠りを妨げられて、やや不機嫌だったから、少し意地悪な質問だと言う事は自覚した上で訊ねた。

岩崎に言われたことも、引っかかっていたのだろう。

疎ましさ故に、自分から引き離したかったのかもしれない。

とにかく、僕は朱李を真っ直ぐに見上げた。


だが。


「……先輩は…」


彼女は焦った様子も、怖がっている様子も、ふざけているでもなく、人差し指をスッと伸ばして僕の胸辺りを見据えた。



「コル・レオニスの持ち主だから。」



カラカラ、枯葉が転がる。


僕はあの時。


至って真面目で冷静沈着な朱李の方が、よっぽどライオンの心臓を持っていると思っていた。


あれだけ。そのひとつだけを異常に好きなのは。


それが欲しくてたまらないからだとは、気付かなかった。