レオニスの泪

似たような症状を持つ人間は、沢山居る。

精神科を避けて、内科を受診する人間も。


それが彼女に結びついたのは、直感、としか言い表せない。

こんなこと、仮にも医者の僕が、言っていいのかどうか、迷うけれども。


兎にも角にも、僕の勘は当たった。




「葉山さん、10番にお入りください。」




マイクを通して呼んでから、数秒後。



「失礼します。」

「はい、どうぞ。」




礼儀正しく入ってきた彼女はかなり怪しい格好をしていて。



「なっ!!!???」



僕の顔を見るなり、驚きの声を上げて、仰け反った。



「葉山、祈さん、こんにちは。」



名前の確認を兼ねて、挨拶するが、返事はない。



「初めましてーじゃなくて、久しぶり、かな?」


「な、な、な、なんで貴方がっ!!!??」



安心するかと思ったのに、相手は狼狽え続けている。



ー精神科が不本意なのかもしれないが、仕方ない。



その時僕は、変な使命感を帯びていて、なんとかして、彼女を助けなければ、と考えていた。




「ちゃんと来てくれて安心したよ。」



それがー

果たして『医者』としてだったのか、『僕』として、だったのか。







「僕の名前は神成伊織。宜しくね。」







今となっては、分からない。