レオニスの泪

そう言えるのは、葉山祈との再会が、思いの外早くやってきたからだ。





多忙を極めて、あの日の出来事も、記憶から薄ぼけてきていた、火曜日。




「次の方、初めてです。」


「…へぇ」


楠木が差し出したファイルを受け取った僕は、内心珍しいなと思っていた。


有難い事に、僕を訪ねて来てくれる患者は、近隣遠方を問わず相当数いる。

その上、この科は時間が掛かる。

手一杯の僕は、案の定かなり患者を待たせている。


つまり、新患の受け入れは、中々僕に当たることはない。


ー成る程ね。ご指名、か。



挟まれている、内科の吉田先生からの院内紹介状を見て、納得。


葉山、祈。



ー珍しい名前。23歳、か。若いな。


検査の内容、所見に目を通しながら。



ー過換気症候群…精神科に難色…



ぼやけた記憶が、瑞々しい緑に、はっきりと染まる。



ーあの子、か。