ビーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
「葉山さん!?さっきからずっとタイマー鳴ってるけど?」
笹田の声にはっとして、周囲を見渡せば、困惑顔の同僚達。
「あっ!!すいませんっっ!!!」
慌ててタイマーを切ってから、オーブンに目をやった。
―ぎ…ぎりぎりセーフ…
照り焼きチキンの焦げ目が、やや濃い。
「ちょっとちょっとー!!そんなぼーっとしてたらこれからの時間回んなくなるよ!」
チーフ金森の厳しい声が響く。
「―すいません!!」
一番の混雑時はもう直ぐだ。
―駄目駄目、仕事に私情は挟んじゃいけない。みんなに迷惑がかかる。
なんとか気持ちを切り替えようと試みるが、中々出来ないでいた。
「珍しいね?葉山さんが怒られるとか。」
傍に来た笹田が目を細めて、小声で言う。
「いや…すいません…本当に。助かりました。」
「別に大丈夫だけど。」
してやったりの顔で、得意気に鼻を鳴らした笹田。
正直面倒臭い。
「葉山さーん、ちょっとの間レジ入ってくれるー?」
「あ、はーい!」
タイミング良く呼ばれたので、小さく会釈してその場から離れた。


