それは、多分に漏れず、《彼女》もそうで。
「じゃ、君は肺炎だったり、癌だったり、骨折したりしても病院に行かない訳?」
「はぁ!?」
身体ごと振り返って僕を睨めつける彼女に、いつかの《彼女》が重なる。
「精神科は暇な人が来る所じゃないよ。心についてしまった傷や罹ってしまった病を治す為に来るんだ。心は命に直結している。」
無意識に思い出し、つい、言葉に力がこもった。
「貴方に何がわかるっていうんですか?」
なのに、葉山祈は、馬鹿にしたように笑いかけ、走り去る。
ー君の。
「君の心は血だらけなのに。」
零れ落ちた言葉が、せめて風に乗って聞こえていたらいいのに。
自分の痛みや傷に、気付いてくれたらいいのに。
そして、少しでも早く、癒えると良い。


