レオニスの泪

隣に座る彼女は、ポケットからティッシュを取り出して、ごしごしと顔を拭いている。


肩にかかる位の、栗色の髪がさらさらと揺れた。



そして。


「あの…」



あれだけ苦しい状態が続いたのだから、もう少し休んでおけばいいものを、突然、僕に向かって頭を下げる。


「本当にありがとうございました。じゃ、私はこれで。」


そう言い捨てて、ベンチから立ち上がり、どこかへ行こうとした。


ーえ。


「え、ちょっと待って。」


思わず引き止め。


「君、そのままじゃ、危ないよ。」


医者としての一言を投げかけた。


彼女の抱えている「何か」はまだわからないけれど、身体が悲鳴を上げているまでになっている。

彼女自身は気付いていなくても、「何か」は、確実に彼女を苦しめ追い込んでいる。


「危ない?」


僕の忠告に、小走りになりかけた足をピタリと止めて、彼女は顔だけ振り返った。

何が言いたいんだ、と不愉快そうに眉を顰めて僕を見ている。