家に帰って、濡れた洗濯物を取り込んでから、お風呂に直行し、夕飯の支度をして、さぁ寝かせるぞ、という頃。




「…慧、ママ、謝らなくちゃいけないことがあります。」




お布団に入って、ころころと寝返りを打っている慧は、相変わらずイマイチな態度でいる。


その前で正座して、口を開いた。




「本当にごめんなさい。明日お仕事お休みできなかったの。ごめん!」




がばっと頭を下げ、慧の反応を待つ。



一秒過ぎ、二秒過ぎ。



「………」



無言が続くので、さすがに顔を上げて様子を窺ってみると。




「!」



ぴたりと動きを止めた慧が、ぼろぼろ泣いていた。



「慧っ…ごめんっ…本当に…」




慌てて抱き寄せるが。



「ママっは…ひっ、、、ひっ…僕っの…こと…ど、、どうでも…いい…んだ……」



胸が引き裂かれるかと思った。



こんな幼い子に。



ただでさえハンデがあるのに。



まともに母親すら、できない。



まして、愛情の注ぎ方も、不十分で。




「そんなことない…そんなことない…」




その夜は、慧が泣き疲れて眠るまで、ずっと抱っこしたまま、胸の内に広がるどうしようもない感情の波に押し潰されそうになっていた。



不思議と涙は出ない。


引き換えに、息が吸い難く感じた。