それはまさしく神成で。
心臓を突かれたかのようなダメージが、私を襲う。
ーな、んで。
呆然として、立ち止まってしまっていた足が、神成の姿に誘われるようにして、再び動き始めた。
一歩、一歩、近付くごとに、速さを増して、最終的には小走りになっていた。
「………」
一心に空を見つめる彼の前で立ち止まって、その頭の上に、自分の持っていた傘を差しだす。
それに気づいた神成は、空から視線を外し、ぼんやりとした目で私を見つめー
「…来て、くれたんだ」
そう言って、笑った。
「ーっどうして…」
なんで、そんな風に言うの。
なんで、待ってるの。
放って置いてくれれば良いのに。
こんな私のことなんて。
あのままさよならしてしまえば良かったのに。
あの時さよならしなかったからー
カタン、と傘が手から落っこちた。
無意識、ではない。
でも、無意識かと思うほど、勝手に身体が動いて。
気付けば、真正面から、神成の頭を引き寄せ、抱き締めていた。
ザァザァと雨音が変化する。
雨で濡れた相手の髪の感触が、自分の掌に伝わって、何故か泣きそうになった。