レオニスの泪

「ふざけたこと言わないでちょうだい。あんなハゲ親父に恋なんかするわけないじゃない。そうねぇ、例えば、今日は昼時に、患者さんをターゲットにしたわよ。名前までは聞き出せなかったけどね。私の勘からすれば、まだ通院するわね。これで私のリストも30人を越えたわ!」


鼻息を荒くして、ふん!と得意げに話す笹田。

ここまでくると、凄いとしか言えない。


「因みに、今日の方は、お幾つ位だったんですか。」


「うーん。20歳位かしらね!」


「ほぉ…」


さすが、永遠の乙女。

年齢に制限もないらしい。


「葉山さんも、合コンとか行ったらいいのに。」


「はぁ…」


「あとは、ここの先生か、患者さんとか、森さんみたいな、製薬会社の人とか狙ってみたら?」


「……」


もう、返す言葉が見つからない。

正直、そういうの、面倒なんです、むしろ男嫌いに拍車がかかっているんです、なんて言おうものなら、何十倍にもなって返ってくるだろう。


「あ!そっか!葉山さんには、木戸さんがいるものね!」

「ちょっ、何言ってるんですか!やめてください。」

「珈琲下さい。」


私を見ている、笹田の視線が背後に向けられ、その口がパクパク、と空気を食べる。


「笹田さん?」


何が起こったのかわからずに、首を傾げると。


「今、休み?」



ーうわ、お客さん!?



調理場の笹田に向き直って話していたせいで、第三者の声が交じったことに、気がつかなかった。




「す、すいませんっ!」


掛けられた声に慌てて、振り返って。