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「お風邪、大丈夫ですか?」
翌朝、怠さが残る身体を無視して、慧を保育所に連れて行くと、直ぐに先生が吹っ飛んできて、心配そうに私の様子を窺った。
「…あ、はい。すいませんでした。」
大丈夫、とは言いたくなくて、咄嗟に謝る私。
「何も謝る事なんかないですよ!にしたって、あんなカッコ良い彼が居たんですね!」
来た。
くるかくるか、と覚悟してはいたが、やはり来てしまったか。
苦笑するしかない。
「初めてお目にかかって驚きました…慧君も、よく知っているみたいですし!」
朝だというのに、興奮し切った顔で、先生は神成をベタ褒めした。
童顔好きだったのかもしれない。
私は大きな誤解をそのままにして、先生の話を、右から左へと聞き流す。
だって否定するわけにはいかない。
「あ、じゃ、仕事なので失礼します。色々ご迷惑おかけしました。」
区切りが良いところを見計らって、保育所をそそくさと退散。
神成は、何故ここまでして、嘘を吐いてまで、私を助けてくれたのか。
こんな自分のことなんて、放っておいてくれれば良いものを。
実の所、慧のことに関しては、心底助かったと思っている。
ーとにかく、何か、御礼しなくちゃ…
何が良いかな、と考えつつ、自転車を走らせた。


