「ラララ…ライバルって、、、そこの??」
「うん!覚えやすいよね~!敵に塩おくられちゃったね~!」
どこで覚えてきたのか慧が楽しそうに笑う。
「……」
我が子を前に、複雑な心境の私。
ライバル、とは。
うちの前に、今年の3月完成した、出来立てほやほや7階建てマンションの事で。
元々陽当たりの良かった二階建ての小さなアパートは、見事に影になってしまった。
このせいで、日照時間が少ない冬場の洗濯物は、乾きづらくなった、と決めつけている。
周囲の一戸建ての人達も、反対運動をしていたが、それも虚しく終わり、今はその時の名残の旗が、頑固なおじいさんの家の庭に残るのみとなった。
「ご近所さんだったんだ…」
表には出さなかったが、何かと敵対視していた私。あのマンションの事を、ライバル!と言っては、洗濯物の恨みを愚痴っていた。
そして、それに倣うように、慧もライバルと呼ぶようになった。


