レオニスの泪

「はは…参ったな…迷惑かけちゃったどころじゃないじゃん…」


二度と関わりなんて持つもんか。

病院で会わないようにしていれば、その願いは叶う筈だった。

あの時木戸に呼び出しを受けてなければ、セーフだったのではないか。


だが、ここまでしてもらって、何もせずにお礼も言わないまま、はいサヨナラとは人として、如何なものか。


「…連絡先知らない…」


つまり、病院に会いに行くしかない。

億劫だ、と思っていると。



「あの人、何かあったら呼んでって、言ってた。」



私の独り言を聞きつけた慧が、隣でゼリーをフローリングの板に沿って並べながら答えた。



「…呼んでって…どうやって?慧、電話番号教えてもらったの?」



ちら、と振り返った慧は、首を振ってニコリと笑う。



「ううん、あの人ね、ライバルに住んでるんだって!えっとねー、707!」



ーえ。



一瞬、頭が真っ白になった。