レオニスの泪

「…びっくりしたぁ。ママ、驚かせないでよ。」



薄暗い車内。

慧が助手席から、私を振り返って耳を塞ぐフリをした。



「ちょっ、えっ、あっ、け、け、慧、どうして…え…」



相変わらず頭は痛くて、寒気はするけど、動揺っぷりが、それどころじゃなかった。




「説明は後でするから。とにかく今は寝る事が先。」




ステーションワゴンの運転手が、バックミラー越しに私にぴしゃりと言い放つ。



「そんな…ていうか…これからどこに…」


「何処って…家まで送ってってる途中。」




あたふたする私に、今度こそ呆れた声で、神成が頭を掻いた。




「しょうがないでしょ。葉山さんをあのまま放っておく訳にはいかなかったんだから。」



そりゃ、そうかもしれないが。



ーだめだ、グラグラする。


眩暈がする。




「着いたら、起こすから。それまであと少し寝てて。」



どうせ、情報処理能力は今、著しく低下している。

クリアな理解は出来そうにない。



「すいま…せん…」



一応謝罪して、あっという間に、私はパタリと闇に落ちた。