「…心配って…気づかれたの?」
ややあって、神成が訊ねてきた。
いつか、今の私の精神状態に気付いた家族はいるかと訊かれた記憶が蘇る。
あの頃は、まだ、慧に気付かれているとは思っていなかった。
でも、今思えば、慧はずっと気付いていたのかもしれない。
とにかく現在は確実に悟ってしまっている。
「笑ってないんだそうです。」
へへへへ、とおかしくもないのに、笑えた。
「笑ってるつもりなんだけど、笑えてないそうです。」
いつから、笑顔が無くなった?
いつから消えた?
どっちにしたってー
「前みたいになんか笑えない。上手になんか笑えない。」
一番楽しかったあの頃みたいには笑えない。
夢と希望に満ち溢れていた日々。
言葉にしてしまえば、安っぽく聞こえるけど、でも楽しくて楽しくて仕方がなかった。
あんな笑いがしたい。
あんな風に誰かと笑い合いたい。
だけど。
「ーできない。」
あんな無邪気な自分は、もう残っていない。


