「君は少しは人に甘えることを覚えなさい。」
カチンときた。
神成の顔は、最初から今まで全く見えてないけど、頭にきた。
痛みと熱に任せて、全部ぶちまけてやれ、と思った。
「ーどうせ、甘えることが下手な、かわいくない女ですよ。」
「え?」
酔っ払いに見えなくもないだろうな、と思う。
きっと据わった目を、自分はしているだろうから。
「前の旦那にも、その前の彼氏にも、言われましたよ。もっと頼って欲しいって。」
その度に、どうしていいのかわからなくなった。
頼りたい。
でもどうやって?
誰が答えてくれる?
そんなの待つより自分で動いた方がよっぽど早くて効率的だ。
誰かに寄りかかっていたら、居なくなった時に、ひとりじゃ立てなくなる。
「どうせ、女としての価値だってもうない。」
だから、せめて、母親として位、きっちりとこなそうと。
「なのに、慧にまで心配かけた…」
自分の目は今どこを見ているんだろう。
濃い緑だろうか。
それとも、迫り来る夜だろうか。


