「葉山さん、付き合ってる人とか居ないの?」
「あ、はぁ…子育てに精一杯ですし、、結婚とか、正直こりごりですし…」
朝のミーティングが終わり、手洗いを済ませたところで、笹田が話掛けてきた。昨日に引き続き、どうしてこう恋バナしたがるのか、私にはわかりかねる。
見合い話もやたら持ってくる、お節介なお方だ。
「結婚しなくたっていいじゃない!遊びで付き合えば!」
「や…、そういうのとか、、興味ないです…」
「真面目ねぇ~、若いのに勿体無い!」
口元はマスクで隠れているが、目だけで笑って、持ち場に向かった。
遊び、とか。
冗談じゃない。
本当に春なのか?!と疑いたくなる暑さに、早くもじっとりと身体に汗を掻く。と、同時に、苦い感情が湧き起こるのを感じる。
離婚直後は、寂しくて寂しくて仕方なかった。
言葉を話せない子供と、二人きりで家に居ると、気が狂いそうになった。
誰かに、頼りたい。
包んでもらいたい。
そんな感情と毎日闘った。
理想は、子供の居ない、すごく年上の人。
ステータスに経済力は欠かせない。


