「ただいまぁ」
『おかえり、満桜ちゃん』
「ねぇねぇ、咲良さん!雅貴さん!」
「そんなに慌てて、どうしたの?」
咲良さんが可笑しそうに微笑む、
それを優しげな眼差しで見る雅貴さん。
この2人の間の空気はいつも通り
甘い。
「屋上で助けてくれた人の話したよね?」
「あぁ、花言葉の彼か」
「そう!その人ね、同じ高校みたいなんだ!!」
「へぇ、よかったね満桜ちゃん。やっとお礼言えるわね」
「うん!…でも…どっちか分からないんだよね…」
「ん?どういうこと?」
私の言葉に2人が首を傾げる。
夫婦は似るって本当なんだなぁ、って、2人を見てると思う。
私もいつか、こんな風に好きな人が出来るのかなぁ…――――
「……ん…おちゃん、満桜ちゃん!!」
「っ、!!」
「もう、満桜ちゃん、考えだすと固まって周りが見えなくなる癖、変わらないよねー」
いけない、自分の世界に入ってしまった。
2人とも苦笑してるし…
「ごめんごめん…えっと、どっちか分からないって話だったよね……あのね―――」
2人に説明しながら、私は思った。
確かに、鎖骨にホクロは、重要な手がかり。
でも、霖也と霜也を見たとき、どちらにしてもあの彼のような、清らかさは感じられなかった。
あの時の彼は、とても朗らかで
本当に純粋無垢という言葉が似合うような人だった。
対して
霖也は、面影はあるものの、その笑顔は朗らかとは程遠い、色んな物を隠した笑み。
表面上は明るくても、闇が見え隠れする。
霜也は、面影はあるのに、笑顔さえ無かった。瞳は曇り、あの時より遥かに広く、たくましくなった背中は、全てを拒絶するようだった。
顔も、ホクロも、彼なのに
中身を何処かに置いてきてしまったかのように、2人とも、全く違う人。
一体彼は、どちらなのだろう。
それとも、どちらも違う?
私は彼に逢わなきゃならない。
その為には、彼らに近づくことが先決。
きっと、私が見つけてみせる。
あの時の彼を―――――
変わり果ててしまった彼らの中に。


