固まる私のことなんてお構いなしに、2人は話す。
「はあ……、どうでもいいけど、霖也、
この煩いのどうにかしろよ」
「んー、無理」
「俺行くから」
「おー、俺もそのうち行くわ」
もう1人の黒髪の彼は告げるやいなや、踵を返して行こうとする。
それを私は見送……
っちゃダメでしょ!!!
「あの!」
周りの声に負けないように、必死に呼び止めた。
すると彼は、ちゃんと振り返ってくれた。
「…なに?」
……かなり嫌そうだったけど。
「名前!まだ聞いてない!!」
「別に知らなくてもいいだろ」
「良くない!!私は知りたいの!!!」
「はあ……霜也(そうや)、これで満足?」
本当に渋々って感じ。
…それにしても、私は叫ばないと自分の声さえ聞こえづらいのに、2人は叫ばなくても、明瞭に聞こえる。
よく通る声だなぁ。
「うん!ありがとう!!私は満桜!!
よろしくね!!!」
「別に聞いてねーよ」
そう言うと霜也は背を向ける。
見送る気持ちでいると
彼は呼んでいないのに振り返った。
「…1ついい忘れてた」
―――ザァッ
その時窓から風が入って、
霜也のワイシャツの襟がめくれた。
「俺、女嫌いだから、それだけ覚えとけ」
「っ…!」
彼の言葉は聞こえていたけど、
私はそれ以外のことで頭がいっぱいになっていた。
だから、『近づくな』という意味だとは全く分かっていなかった。
―――だって、
向かって左側
霖也と同じ、
星型のホクロがあったから。
『誰かに似ている』
なんて、
私の心に記憶に残るような男の人は
1人だけ、
彼しかいない。


