床が軋む音で目が覚めた。
天井にはクモの巣がはり、部屋の隅には埃が溜まっている。ここ数十年は誰も住んでいなかった廃屋らしい。

何故私はこんなところにいるのだろうか。

ごく最近まで大きなお屋敷で生活し、ふかふかのベッドで寝起きしていたとは到底思えない。
音がした方へ首を動かしてみると、“彼”が今ちょうど部屋へ入ってきたところだったらようだ。その手にはパンが握られていた。
起きた私を視野に入れた彼はパンを半分にちぎり、黙って私に渡してきた。



「ありがとう。……いいの?半分も」

「ん。……早く食えよ」



彼はかなりぶっきらぼうだが、私をこうやって匿ってくれた、心優しい人間関係だ。
実は今までも人間に助けを求めようとしたことはあったが、ほぼすべての人間に拒絶れた。