宇宙の星

いつもと変わらない。
近くの高速道路を走る車の音、何処かで鳴いてる烏、線路を遠慮なく音を立てて走り出す電車。都会は嫌いだ。

そう思ったのは、いつからだろう。

♪ ♪ ♪

ケータイがなる。
「んーーーんっ…ん?」
枕の下にいつも潜らせてるケータイをめんどくさそうに、片手で探る。

「あれ?あーーーれ?あった!」

目で確認しなくても、片手だけでケータイを見つける事のできた些細な喜びに勝ち誇ったように軽くガッツポーズ。

「マジ!!!!!⁈」

宇宙はベッドから飛び上がり、寒い身体を摩りながら小走りで洗面に向かう。
大きく背伸びをして、追ってくる身体の重さと怠さを同時に感じ、歯を磨いて顔を洗う。キンキンに冷えた水道水が顔を微かに麻痺させ、それと同時に今までの怠さと眠さが嘘のように目が覚める。

真っ白なバスタオルで顔を吹き、少し大きいな…と思いながらも丁寧に顔についた水滴を拭き取る。拭き終えたタオルを首に掛けテレビのボタンを付け、ニュースを確認する。毎日どーでもいいようなニュースばかり、選挙だの株価だのそんな事はまだ高3の俺にはどうでもいい事だ。

『今日は一日晴れもようです』

いつも嘘の笑顔を作るのは大変だなぁとか変な事に感心しながらお天気お姉さんの顔を見る。

早く着替えなきゃ、部屋に戻り青いスラットしたズボンを履きグレーのジャケットを着て首にはストールを雑に巻き、紺色のニット帽をかぶる。割と細身な俺は基本どんな服でもきれて小さい頃から服には困らなかった。

どこで買ったのかも覚えてない指輪を左人差し指付け、軽く香水を付ける。
いってきますーーーと誰も居ない家に向かってそう告げると、マンション7階に住んでる宇宙はエレベーターが来るまでの時間を少しでも短縮しようと階段を駆け下りる。「おはよう」と向かいのマンションの洗濯物を干してるおばちゃんに言われ、どーもと少し怠そうに返事を返す。