生side



高校3年の9月。俺はある少女に恋をした。



帰り道忘れ物をしていることに気がつき無人だと思っていた教室にいくと、その子はいた。



窓際の一番後ろの席、3年になってからずっと空席。
席替えは何度かあったが、その席だけは変わることがない。
そこにはあるわけありの女子生徒が使っているからだ。



『窓際の一番後ろの席』というのはいわゆるサボることのできる席。
授業中に何をしててもあまり先生に見つかることがない。
実際、俺自身もその席を狙っているわけであって...。



その席を、まぁ、悪く言えば独占している女子生徒の姿を見てみたいと思ってたりする。だって、一番いい席独占とかどこのお嬢様だよって思うし?



なんて、前から気になっていた女子生徒は今その席に座っている。



背中までのびた色素の薄い茶髪は、空いている窓から入ってくる風になびき、生服を着ていても全然わかってしまうくらい細い体のライン。座っていてはっきりはわからないが160センチくらい身長はあるだろう。



今まで可愛い人綺麗な人はたくさんみてきた。
テレビや雑誌でも『可愛い』『綺麗』だと思った女性はたくさんいる。
でも、その子は違った。



その子の横顔はとても綺麗で、風や光のせいでもあるのか消えてしまいそうなほど美しくもみえた。



そして、それと同時に儚く、脆くもみえて、本当に目の前から消え去ってしまうかとも思った。