瑠璃と別れて3ヶ月たった、瑠璃は変わらず独りで行動している。
俺にはかながいるのに、何でこんなに瑠璃が気になるのかが理解できなかった。
瑠璃がいじめにあっていると知ってからも、何にも変わらない・・・
むしろ、自分が瑠璃に近づかなくなったように感じる。
かなを悲しませたくないが、瑠璃が家に帰ったらどんな気持ちなのか?毎日泣いているのか?そんな事ばっかり考える。
そんな風に、モヤモヤした気持ちで毎日を過ごしていた・・・

廊下-
今日の放課後に、書類を作るように言われた俺は、めんどくさいと思いつつも書類を作っていた。
誰もいない教室に一人で・・・
クラスの名簿と、各委員会のメンバーの書類。
どう考えたって、担任がやればいいことだと思う。それを生徒にやらせるかって俺は担任に言いそうになった。
まぁ、そんなこんなで書類作成をやるためかなには先に帰ってもらった。
一時間ほどで終わった作業だったが、面倒だったことには変わらない。
それを、たった今担任に出してきた帰りだった。
「あ~ぁ、やっと終わったよ・・・だりぃ~・・・」
そう呟いて歩いていたら、前から瑠璃が歩いてきた。
瑠璃は携帯をいじっていて、俺にはまったく気づいていなかった。
付き合っていたころは、すぐに俺に気づいて抱きついてきたのに・・・
そう思ったら苦しくなった。
瑠璃とすれ違ったとき、軽く瑠璃とぶつかった。
そのときに瑠璃がフッと顔を上げた。

久しぶりに近くで見た瑠璃の顔・・・
でも、あんなに綺麗に光っていた瑠璃の瞳には光がなくてくすんでいる様に感じた。
以前の瑠璃とは、全くの別人のように見えた。
こうなったのも俺の責任、けれど今更どうする事も出来なかった。
「痛いんだけど・・・」
「そんなに強く当たってないよね?かなり軽かったんじゃないの?」
ごもっとも。
瑠璃の言うとおり、全く痛くはなかった。
少しでもいいから、話したかっただけ・・・
それでも俺は冷たく言い放った・・・
「自分からぶつかった癖して、謝罪もなしなのか?」
「あっそ、すみませんでした。」
そういって擦り抜けて行った瑠璃の手首を俺は掴んだ。
「痛いんだけど・・・」
瑠璃の腕は変わらず細かった・・・
けれど、以前に比べたらそれ以上に細くなっていた・・・
確か瑠璃は、何かあったり一人で何でもかんでも思い込む癖がある。
母子家庭の瑠璃は、母親に迷惑かけたくないって言って・・・
それで一回、もの凄く痩せた時があった。
そのときもこんな感じだった・・・
「今度は何を溜め込んでいるんだよ・・・」
「あんたには関係ないよね、話しても何の解決にもならない。否、あんたは他人でしょ、いい加減に離してくれない?痛いんだよね…」
「ちょっと来い。」
「は?嫌に決まってんでしょ?離して。」
瑠璃の言葉を俺は無視して、自分の教室に入っていった。
「何なの?帰りたいんだけど…」
不機嫌そうな顔をして話す瑠璃…
俺は瑠璃を壁に追い込んで、片手で瑠璃の腕をつかんだ。
「痛いから離してよ。」
そう言っている瑠璃の言葉を無視して、キスをしようとした…
「っ・・・嫌!!!離してよ!!」
そう言って暴れる瑠璃・・・
瑠璃の片手は俺が掴んでいて、身動きは取れないがもう片方の手を使って俺を突き放そうとしていた・・・
そのもう片方の手を俺は押さえつけて、瑠璃に無理矢理キスをした・・・
一度口を離して、もう一度する・・・そうしたら、瑠璃は俺の唇を噛んだ。
その痛みによって、俺は手の力を緩めた・・・その緩めた隙に瑠璃の腕はスルッと抜けた。
瑠璃は俺の頬を、思いっきり引っ叩いた。
目に涙をためて・・・
「っ・・・最低・・大っ嫌い!!!」
そう叫んで瑠璃は鞄を持って教室から飛び出していった。
あんなに拒否されたのは初めてで、何故だか凄く苦しくて辛かった。
自分から突き放しても、こんなにも苦しむ自分がいる。
そんな自分を心の奥に塞ぎ混んだ、閉じ込めて目を向けなかった。その結果がこれだ・・・
自分でした行動によって起きた結果、今更許してくれなんて言えない。
それ以上に、こんなにまでなっても瑠璃のことに対して気づかなかった自分が憎かった。
今まで一緒にいたくせに、瑠璃を裏切って突き放す。
誰でも嫌になるようなことをした、謝っても許してくれるはずはない。
「今さら後悔…か、バカすぎだよな俺は。ごめんな、瑠璃…」
どんなに謝っても、瑠璃はそこにいない。傍にいない。
あんなに毎日俺の隣にいてくれた彼女はいないんだ。
心に大きな穴があいたように感じたのは、自分でもわかっていたはず。
それを自覚していなかっただけの話だ…いや自覚はしていた。
自分がそれを認めなかっただけだった。
自分の間違いを認めたくなかった。それだけだった。
自分で犯した過ちを、取り戻すことは 難しい…
今になって後悔する事はただ一つだ。
瑠璃の話を聞かなかったことに後悔した。
大吾が前に言っていたことも思い出した。
≪後悔すんぞ≫その通りだった。


この時点でなら、前のようにまた戻れたのかも知れない。
けれど俺はその事に気がつかないでいた…
そのチャンスを見逃した俺は、瑠璃との間に大きな距離できていた。
この距離は自分で作り出したもの。これを戻すことが出来たのはこの時だったのに、それに気がつかなかった。
それに俺が気づいたのはもっと先のことだった…