何だかんだとあり、私と夜は二年生になりました。
去年は色々あったけど、あれから何も起きなかった。今年は夜と同じクラスで、無事に健斗君たちも入学してきた。
私は生徒会の副会長になって、夜は会計になった。やる気はなかったんだけど、校内の成績で決まるみたい。渋々引き受ける事になった。
「桜、この資料はどこだ?」
「そこの棚の上の青いファイルの中。」
「サンキュ。」
生徒会資料を作成と整理するのがかなり大変。あと一人くらい人手が欲しいな。
「お~い、夜。手伝いに来たぞ~。」
「桜ちゃん♪クッキー持って来たよ♪」
扉の隙間から顔を出したのは健斗君と奈々ちゃんだ。
「二人ともまた来たの?一応ここは生徒会室なんだけど…」
「俺もいるぜ☆」
「亮太君?サッカー部はまだ活動中だよね?」
「終ってからちゃんときたって!」
三人ともそれぞれ部活もあるのに、一日一回は生徒会室に来る。それがもう日課みたいになってるのはどうかと思うんだけど…
「終ってからにしようね、食べるのは。」
「だな、三人とも大人しくそこに座っててくれ。」
夜の指差すソファーに、大人しく三人とも座っていた。
素早く生徒会の仕事を終らせて、お茶にした。
「桜ちゃんたち凄いね、こんなに毎日やっててさ。」
「だるくないの?」
「「めんどくさいに決まってる。」」
「声揃えて言うのかよw」
「夜、上村君って確かサッカー部だよね。」
「今呼ぶか。」
「ごめんなさい!!」
このやり取りが面白いと思うのは、きっと私だけじゃないと思う。きっと夜たちも思ってるだろうな。違ったら恥ずかしいけど…
のんびりお茶してたら、また誰か生徒会室にやってきた。
「篠崎!お前何やってやがる!部活サボってんじゃねぇ!!」
「ちょっ!あれで終わりじゃないんですか?!」
生徒会室にやってきたのは上村君だった。
やっぱり部活まだ終ってなかったんだ。何となくわかってたけど…
「終わりなわけあるか!まだミーティング残ってんだぞ!」
「あ…」
「上村ー、涼太はしごかれるの大好きだぞ。」
「あとね、頼られてると思い込むとすっごく扱いやすいよ。」
「いらぬ事吹き込まないでください!!」
「いいから行くぞ!」
「まだ死にたくないー!!」
ずるずる引きずられていく亮太君。その光景を私達は見て笑っていた。
亮太君ドンマイ。でも自業自得だよ。
「さっくらちゃ~ん♪俺と付き合って!」
「嫌です、お断りします。帰ってください。」
「桜ちゃんが冷たい!優斗助けて!」
「自業自得だ。馬鹿者。」
入れ替わりでやってきたのは、夜の友達の竜也君と優斗君だ。
今日はいつも以上に来客が多いなぁ…
「そんな冷たいところも好きです!」
「優斗、そのバカ連れて帰れ。」
「わかった、東京湾に沈めてくる。」
「嫌だぁぁ!!」
また同じような光景を二回見る。
ずるずると引きずられている竜也君。
今日は何でこんなに人来るのかなぁ?
てゆうかいい加減に本気で諦めて欲しいんだけど…何回目かな?
「桜ちゃんモテモテだね。」
「俺あの人だけでもう10回は聞いてる気がする。」
「俺も…」
「あいつ去年から言ってるけど?」
何か不機嫌な夜。その夜を見て奈々ちゃんたちは笑っていた。私は理解できない状態でいた。夜どうしたんだろう?
「さ、さくさく終らせちゃおっか。」
「そだな。」
お茶を飲み干して、また作業開始。奈々ちゃんと健斗君は、大人しくソファーに座ってた。

30分くらいで作業終了。その頃にはもう外は暗くなっていた。
いつものように奈々ちゃんたちと一緒に家に帰る。…んだけど…今日は少し違った。
だって何でか、上村君がいた。
「鈴木、ちょっといいか?」
「「どっち?」」
「こっち。ちゃんと送るから。」
腕を掴まれて、私は上村君と帰ることになった。何か後ろで夜が殺気立ってるけど、奈々ちゃんたちが落ち着いてと繰り返していた。
帰ってから怖いなぁ…
「えっと、上村君。何か用事でもあったの?」
「ちょっとな…」
「なら別に夜たちが一緒でも…」
「それはちょっと辛いと言うか、怖いというか…」
何か視線を泳がせてキョドッている上村君。
何か言おうとしてるんだろうけど、口を開いては閉じての繰り返し。一体どうしたのかな?
「あのさっ…」
「はい?」
「俺去年から鈴木が好きだったんだ。俺と付き合ってください。」
「…えっ…?」
暗いからよく顔が見えないけど、多分今上村君顔真っ赤だと思う。
というか、上村君が私を好き?嘘でしょ?
「えっと…本気?」
「冗談でこんなこと言うと思うか?」
「でも、上村君モテるでしょ?私なんかより…」
「俺は鈴木が好きなんだ。それ以外の女子に興味は無い。」
「あの…でも…///」
ここまで真剣に告白された事無いから、どう対処していいかわかんない。
「返事はいつでもいいから。今すぐ返事が欲しい訳じゃないから。」
「うん…」
「帰ろうぜ。家まで送る。」
そう言って上村君は歩き出した。
私はその後ろを追いかけた。
帰り道一言も話さなかった。歩きながらずっと考え込んでいたのは上村君の事。
私は上村君をどう思ってるんだろう?
友達?それもなんか違う気がする。
ここ最近の私は何か変だもん。去年同じクラスだったけど、上村君が夜に言ってくれたからいじめのことを言えた。それからも何かと上村君が手助けしてくれて…
今年も同じクラスになれたけど、他の子と話しているのは見ているだけで何かイライラする。イライラと言うか、何か話して欲しくないって思ってる自分がいる。
これって何だろう…何かで読んだ気がする。
『他の子と話してるの見たくないの。』
あ、こないだ買った小説だ。主人公が男の子を好きって自覚した時の部分だ。
『それって、俺が好きだからだろ?』って続いたんだよね…あの本は正直当たりだったな。買ってよかった。
…あれ?てことはもしかして私…上村君が好きなの?
チラッと上村君を見たら、上村君は笑顔を見せてくれた。
何かその笑顔を見た瞬間恥ずかしくなって、顔を思いっきり逸らしちゃった。
「ちょっ、いきなり顔逸らすとか傷つくし…どうした?」
「ごめっ…今上村君の顔見れない…///」
「何で?」
「聞かないで…///」
やばい。自覚したらかなり恥ずかしくなった///
どうしよう、どうやってこの場を乗り切ろう…とにかくばれない様にしないと…
「なぁ、耳赤いけど大丈夫か?」
「大丈夫!全然大丈夫!ほんとに大丈夫!本気で大丈夫!」
「いや、落ち着こうぜ;」
「あ…///」
焦りすぎて言葉が可笑しくなってる事に今気がついた。何か余計に恥ずかしい思いした気がする。
「で、何で顔逸らしたんだ?」
「えぇ~っと…気まぐれ?」
「…気まぐれで顔そらされるとか…俺ほんとは嫌われてんじゃね?」
「嫌ってなんか無いよ!むしろ好きだよ?!とゆうか、好きって気がついて急に恥ずかしくなっちゃっただけで…」
「え?」
「あ…///」
もの凄く恥ずかしいことを言ったような…
互いに無言になってしまった…どうしよう、何か言った方がいいのかな?でも…
「もう一回聞かせて。」
「嫌です!無理!///」
「悲しい…」
「泣きそうにならないで!」
恥ずかしさで今最高速度…瞬間移動できそうです。
もう何で言っちゃったのかなぁ?耳が暑い///
本気でどうしよう、このままじゃあしたから本気で上村君の顔見られない…
「鈴木、あのさ…」
「何?」
「抱きしめていい?」
「何故に?!」
「嫌だったら突き飛ばしていいから。」
そう言って上村君は抱きしめてきた。突き飛ばしていいって言われても、好きって自覚したから突き飛ばせるわけないし…頭の中が混乱しまくってどうしたら良いかわかんなくなった。でも上村君に抱きしめられてたら、安心する。突き飛ばさないで、逆に軽く抱きしめ返した。
上村君は少し驚いたみたい。でも小さくまた言った。
「好きだ。」
真剣にそう言ってくれた。
「うん、私もだよ。ありがとう上村君。」
「じゃぁ…」
「よろしくお願いします。///」
恥ずかしすぎて顔は見られないけど、正直に答えた。もうイライラしたくないし、それ以上に断って後悔とかもしたくない。
上村君は力を弱めて、少し離れた。
何か私の顔を見て、少し笑ったけど。また抱きしめてきた。
しばらくその状態でいて、手を繋いで家に向かった。
「何か実感わかねぇや。鈴木と付き合ってるって言うさ。」
「そうだね…でも本当に嬉しかったよ、上村君。」
「遼。名前で呼んでよ。」
「りょ…遼?///」
やばい、夜以外の男の子の名前呼び捨てにするの初めてだからなんか凄く恥ずかしい。///
「ん、サンキュ。桜。」
「うにゃ?!」
いきなり名前で呼ばれると思ってなかったから変な声出ちゃったよ。
「うにゃって何だよ。可愛いから良いけど。」
「可愛くない!」
「可愛い可愛い。」
そんな言い合いをしていたら、家に到着した。
何か長いようで短かったような気がする。
「ありがとう遼。」
「別にいいよ、また明日な。」
「うん。おやすみ。」
遼は一度頭を撫でて、来た道を引き返していった。家遠いのに送ってくれた。その優しさにまた顔が赤くなった。

「ただいまー。」
「お帰りなさいませ嬢さん!」
「うん、ただいま。遅くなってごめんなさい。」
「若とお譲と坊ちゃんがおまちッス!」
「わかった。このまま行くよ。」
鞄を持ったまま、私は居間へといった。
居間に入ると、お母さんとお父さんはニコニコしていて夜は不機嫌だった。
「遅かったね、でも男の子と一緒なら大丈夫でしょうけど。」
「夜は不機嫌だけどな;」
「なんで?!」
「桜に彼氏が出来たからじゃないかしら?」
何でもお見通しって事かな?やっぱりお母さん達には敵わないなぁ…
夕食の置いてあるところに座って、四人で夕食を食べた。
その間ずっと私は夜と目を合わせられなかった。夜の視線が凄く怖かった。