3月15日 公立桜香学園卒業式

今日は私達の卒業式。天気は晴れで、少し暖かかった。
着慣れた制服も今日で着収め。そうなると少し名残惜しい。ブレザーに袖を通して、リボンをつける。いつも使っていた鞄も今日は軽い。それを持つと、本当に今日で最後と感じた。
階段を下りて、リビングに行くとお母さんもスーツを着ていた。
「おはよう瑠璃。」
「おはよ、お母さん。」

お母さんと朝食を食べて、いつもの時間に私は家を出ようとした。
玄関の扉に手をかけて出ようとした時に、私は動きを止めてお母さんの方へと向いた。
「?どうしたの瑠璃?」
「お母さん、今日までありがとう。色々と迷惑かけたけど、ずっと味方でいてくれて本当に嬉しかった。私ね?お母さんの下に産まれてきて良かった。お母さん大好き!」
そう言って私はお母さんに抱きついた。
お母さんは驚いていたけど、優しく抱きしめ返してくれた。頭を撫でてくれるこの手が私は好き。
「ありがとうは私の言葉よ…瑠璃、ありがとう…」
「お母さん…行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
高校生として…学生としてこのやり取りが出来るのも今日で最後。
お母さんは片手で涙を拭いながら笑顔で見送ってくれた。
家を出たら、冷とかな・カイ・なみ・健・大悟君・真帆さんがいた。
「皆おはよ。」
「うっす!」いつもうるさかったカイ。
「おはようるーちゃん。」味方でいてくれたかな。
「おは~、瑠璃。」何かと面倒見のいい健。
「おはよ瑠璃♪」一年の頃からの親友のなみ。
「おはよう、瑠璃さん。」小学校の時の友達の真帆さん。
「おはようさん。」何かと支えてくれた大悟君。
「おはよ、瑠璃。」私を助けてくれた、大好きな冷。
皆家まで迎えに来てくれただけで、嬉しくなった。皆で学校に向かう。
教室に入ると、黒板には担任からの卒業おめでとうという言葉が書いてあった。
その言葉の周りには、皆一言何かしら書いていた。
「俺らも書いておくか。」
「さんせ~♪」
皆と一緒になって、担任に一言書いていった。
とは言っても、皆ちゃんとしたことは一切書いていない。担任をからかう様な事ばっかりだった。でもそれはそれで、私達らしいかもしれない。私達はいつもこんな感じで、先生達をからかってきていた。それが出来るのもラスト。
しばらくしてから、担任は来て黒板の言葉を読んで大爆笑する。それでも笑顔でありがとうと言ってくれた。
まだ式は始まっていないのに、もう涙ぐんでいる。
「それじゃ、会場に向かうぞ。」

ゆっくりと一歩ずつ体育館に入っていく。
ゆっくりと式は進行していって、卒業生からの式辞で冷が代表となっている。
まさか冷が式辞を読むなんて思わなかったけどね。最後のテストで、私と冷は一点差という僅差で冷が学年一位となった。正直私はやりたくなかったから良かったけどね。
《卒業生式辞 代表 鈴木冷。》
「はい。」
冷がステージに上がって、式辞を読む。
…はずなんだけど…なんか嫌な予感がするのは気のせいなのかな…?
不安な気持ちにもなったけど、ちゃんとした式辞だったから安心した。

…不安的中…
冷は式辞の紙を閉じて、学園長に渡して下りてくる筈なのに冷は降りてこなかった。
学園長はニッコリと笑って、少し左に寄った。
冷は学園長に少し頭を下げて、私達の方を向いて話し始めた。
《え~と、学園長とかに少し時間を貰ったのでお気になさらず。》
いや気にするから!卒業生がなにしてんの!!
《俺は学年全体に言いたい事があります。特に女子の奴等。ファンクラブだっけ?お前等に一番言いたいんだけど…よくも俺と瑠璃の事を邪魔してくれたよなぁ?お前らは人の邪魔しか出来ないのか?俺が誰と付き合おうと勝手だろうが。お前らに邪魔される筋合いは無いんだよ。それと…俺の見てない所で瑠璃をいじめてたみたいじゃねぇか。もう全部瑠璃から話しは聞いている。まぁ仕返しとかは考えてないけどな。でも…一生許しはしねぇから覚悟しとけ。》
え~と…今それを言う必要はあるのかな?冷の表情はもの凄く冷たくて背筋が凍る。
冷の取り巻きたちは青ざめている。というか固まってる。
《瑠璃、ちょっと来てくれるか?》
壇上から冷に呼び出されて、少し焦ったけど隣の子達に背中を押されて私は冷の元へといった。
「ちょっと冷何してんの?今それ言う必要ないじゃん。」
「まぁまぁ、気にすんなって。」
「気にするから!さっさと戻るよ!」
「まてまて、これが終ってからな。」
「は?」
《それと、式が終ってからも俺のとこにくんな。目障りだから。それと…俺には瑠璃以外の女には興味ないから。》
マイクを片手にとって、冷はそう言った。
言い終えた時に、冷は私を引き寄せてキスした。
在校生や卒業生からの歓声がもの凄くうるさかった。それ以上に、私は恥ずかしくなった。
保護者席からは、なぜか拍手が沸いた。
ようやく離してくれた冷の頭を、思いっきり叩いて私は壇上から降りた。後ろから冷は追いかけてきた。
「痛いじゃねぇかよ…」
「どの口がそう言えるの?」
「ごめんなさい。」
「しばらくお預け。」
「んな!」
「何か文句ある?」
「…ナイデス…」
冷は渋々承諾して席に戻った。
席に戻り、学園長からのお祝いの言葉となった。
学園長は《若いとはいいもんですね。》とか言い始めたけど、結構あっさりと学園長の言葉は終った。短くてよかった。
《卒業生退場》
意味のわからない冷の行動によって、会場は一時騒がしくなったものの無事式は終った。退場する時にはもう、何人もの生徒は泣いていた。私も少し泣いていた。

教室で証書を貰って、卒アルを貰って担任の最後のSHR。担任からも最初の話は冷の行動だった。クラスメイト達からは冷やかされたけど、私の表情を見て一斉に静かになった。
そんなに怖い表情してたのかな?
「それじゃ、皆体に気おつけて元気で過ごすように。」
「先生!私達からこれを。」
委員長は花束と色紙を先生に手渡した。先生は涙を流してそれを受け取った。
皆一斉に席を立って先生にありがとうございましたと言い、拍手したら先生は号泣した。
皆それを見て笑っていたけど、皆も泣いていた。
それぞれ先生とかクラスメイト達と写真を撮っていたり、卒アルの後ろを書きあっていた。私達も書いていた。
「ちょっと冷!かな達のとこになに書いてんのさ!」
冷はかな達の卒アルに、『瑠璃と俺は永久不滅♪』と書いていた。
これ一生残るんですけど!わかっててやってるでしょ!
「事実だろ?」
「冷のあほ!バカ!!」
「「「一生やってろバカップル!」」」
「卒業式の日まで言われなきゃいけないの?!」
クラスメイト達になんでか怒鳴られた。
この楽しいクラスも好きだった。何かとノリのいい担任の先生に、楽しいクラスメイト達。今年一年は何も起きなかった。まるで去年の出来事が嘘のようで、冷の取り巻きたちも大人しかった。私が風邪とかで休んでいた時は凄かったみたいだけどね。冷はイラついていたらしい。その事に関しては触れない事にした。
一年の時の思い出は、冷と付き合いだしたこと。それが一番記憶に残ってる。
二年の思い出は、思い出とは言えないだろうけど冷と本気で喧嘩して別れたりすれ違ってた事かな。
三年の思い出は…