何曲か歌って、次の曲でラストになった。ラストを歌う前に私は話した。
『次の曲でラストになります。そして、皆に言うことがあります。私は歌手を辞めます。とゆうか、この仕事自体を今日限りでやめます。』
「なんでぇ?!」「やだよー!」って声が、会場内を飛び交う中私は話し続けた。
嫌なのはこっちも同じ、でももう無理だって自分でわかってるからね。
『嫌なのは私もだよ。でもごめんね?もう以前みたいに歌う事はできないんだ。それに友美李は私が邪魔みたいだから。やめるよ。それと、あんたに言っとくよ。』
友美李のほうに視線を向けた。友美李はワザとらしく怯えてメンバーの後ろに隠れた。
その姿を見て、余計にイラつく。
『あんたは実力で入ってきたわけじゃない。それだけは理解しときなよ。いなくなって自分が一人で歌うとなって、それで今以上に人気が出ればいいけど…ファンの反応は正直だからね?嘘吐いてるやつなんかに人はついてこないから。』
『何の事かわからないですよ。どう考えてもサクラさんが…『偽りはいつか真実になるだろうけど、ならなければ偽りのまま。』どう意味?』
『簡単に言えば、嘘を言い続ければ続けるほどのちのち自分に戻ってくるって事。後悔する前に、これ以上何もしないほうがいいって忠告はしておくから。どうするかはあんた次第だけどね。』
会場内はざわつくけど、気にしない。気にしていたらきりが無いからね。友美李の額には一筋の汗か何かが伝った。これ以上何しでかすかわからないから釘はさしておくけど…どうせしでかすんだろうね。そうだとしても関係ないけど。
『まぁ、やめるからどうでもいいけどね。んじゃ!ラストは一緒に歌ってね!観客席で歌うから!音源よろしくお願いします!』
ステージから飛び降りて観客席に乗り込む?てか混じった。
ファン達はキャーキャー言ってるけど、別にいいかなって思った。とにかくひたすら短い曲を歌える間に回れる観客達の席を回りながら歌った。
ずっと続いて欲しかったけど、そうも言ってられない。終わりは必ず来るからね。

歌も終る時には、会場の入り口前に立った。
曲が終る時にファンの人達に言った。
『短い期間でしたが、ありがとうございました。さよなら!』
精一杯の笑顔を作って笑いながら会場から出た。衣装から着替えなきゃいけないから控え室に向かう途中で、何人ものスタッフとすれ違う。
お疲れ様とか、元気でねって優しい言葉をかけてくれて凄く嬉しくて涙が流れた。流れる涙を手で拭いながら控え室に入っていった。
控え室は個別にしてもらったから、誰も人はいない。イスに座っていたら、ヘアスタイリストさんがお疲れ様って言いいながら入ってきた。
「本当にやめるつもり?」
「うん。やめるよ。これ以上歌い続けても、前みたいに楽しんで歌う事できないもん。そんな状態でなんて歌いたくないよ。」
「そう、残念だけどこればっかりは私達がとやかく言う権利は無いものね…」
セットされていた髪は、ゆっくりとほどかれてサクラから瑠璃に戻っていく。
「これからは学生生活を楽しむのよ?」
「楽しむか…出来ればいいけどね。」
「何か言った?」
「ううん、気にしないで?こっちの事だから。」
髪は全てほどけて、サクラはもういなくなった。椅子から立ち上がって、私服に着替えて瑠璃に戻った。これにてサクラはもうさよなら。もう二度とサクラは現れない。
「…さつきさん、今日までありがとね。」
「どういたしまして。体に気をつけるのよ?」
「うん。さよなら。」
ゆっくりと扉を開けて、控え室から私は出た。廊下をゆっくりと歩いて会場から出た。今はまだライブ中のはずだし、観客とかに捕まるはずないと思ってた…けど…

扉を開ける直前に、私は動きを止めた。
だって、扉を開けたところで先に進めないから…

「サクラだ!」
一人が私に気がついて、一斉に駆け寄ってきて完全に足止めされた。人の多さに驚いたわけじゃなく、ライブなのになんで外にいるのかという事で混乱した。
今の時間は確かメンバー達が歌ってるはずなのに…なんで?!
「サクラやめちゃうの?!」
「そんなのやだよ!」
「もっと歌ってよ!」
「あの…ライブ中なんじゃ…」
「「「サクラがいないならライブなんてどうでもいい!」」」
囲んでいた周りが声を揃えてそう言ってくれた。その言葉を聞いた瞬間、堪えていた涙がまた溢れ出した。
「あれ…?」
「サクラ…泣いてるの?」
「あれ?なんで…」
服の袖で何度も何度も拭ったけど、止まる事は泣く余計に溢れ出してきてとまらなかった。
周りの人達は大丈夫だよとか、泣かないでって言ってくれてるけどなかなか止まらなかった。
「サクラ、もっと歌いたいんじゃないの?だから泣いたんじゃないの?」
「サクラはどうしたいの?」
「サクラの本音を言ってよ!」
両肩を掴まれて、前に立ってる一人の同世代位の子にそう言われた。
「っ…歌いたいに決まってるじゃん!まだ歌いたいしやめたくは無いよ!でももう無理なの!私の居場所なんてもうどこにも無いの!もう…やけくそで歌いたくないの…ごめんなさい…」
掴まれていた手を振り払って、私は走った。囲まれてた人ごみを掻き分けて、とにかく走った。逃げたって思われても構わなかった。とにかくもう、本気で歌う気が無かった…

―回想終了―
…懐かしいなぁ…あれからもう二年か。実際、本当にあれ以来歌ってなかったし…もうサクラ自体忘れられてるって思ってた。サクラの事を覚えている人がいてくれて、本当は嬉しかったしね。
なんて感じで過去のことを思い出していたら家についた。
「ただいまぁ~。」
「お帰りなさい瑠璃。お疲れ様。」
「お母さん!退院したの?!」
「えぇ、ついさっき帰ってきたのよ。」
「言ってくれればもっと早く帰ってきたのにぃ~…」
「サプライズがしたかったのよ。ご飯食べるでしょ?」
「食べる!」
「じゃぁ着替えて来なさい?用意しておくから。」
「うん!」
久しぶりにお母さんと一緒に食べる夕飯は、凄く美味しかった。お母さんも元気になってよかった。少し安心した。でも…
冷との会話を思い出したら、少し苦しくなった。
お母さんに相談してみようかな?でも何て言えば良いかわからないし…
うぅ~っと頭の中でぐるぐると考えていた。
そうしたらお母さんが一言言った。
「瑠璃、後悔のしない恋をしなさいよ?」
「え?」
「後悔するような事だけは絶対にしない事、それだけは約束してね?」
「うん、でもどうしていきなり…」
「何となくよ。でもね?後悔だけはしたくないでしょ?失敗が怖くて言わないで後悔するよりも、言ってから本音を聞いて後悔する方が清々しいと思わない?」
「お母さんって結構さっぱりとした性格だよね;」
「あら、そんなことは無いわよ?たとえ私が入院している時に無断外泊してるのを見逃してるんだから。」
あれ~?何だかもの凄くお母さんが怖いよ~?気のせいなのかなぁ?
「あはははは、そうだねぇ~…てゆうかお母さんいきなり毒舌にならないで!?」
「気のせいよ?でも、今回だけよ?次からは連絡入れなさい。」
「…ごめんなさい…」
「いいのよ、行くなとは言わないわ。でも、行き先は言って頂戴。」
そう言いつつお母さんは笑った。
お母さんが叔父様の家に行く事で笑ったのを見たのは初めてだった。
お母さん少し変わったかもね…
ゆっくりと夕飯を食べながら、文化祭の話をした。夕飯を食べ終えて、風呂に入って自分の部屋に入って布団にもぐりこむ。

明日から冷と気まずいかもしれない。とゆうか気まずい。どうしよう…
とか色々考えていても、何かと疲れたので睡魔に負けた。
そんな感じで、文化祭は終了した。