#私の大好きな彼氏さん#

歌わないの?とかどうしたんだろう?とかの声が聞こえた。
『…ごめんなさい。アンコールは嬉しいし答えたいけれど…こいつらの演奏なら私歌いたくないから。勝手でごめんね。あとはこいつらがやってくれるみたいだから。』
「えぇ~!嘘ー!」「なんでぇ?!」「もっと聞きたかったぁ!」
そんな声が聞こえてきて、ちょっと良心が痛んだ。正直なところ私も歌いたいし、楽しみたい。でも…こいつらの演奏なんて絶対にいや。
『本当にごめんなさい。でも本気でこいつらは二度と一緒にやりたく無いの。ごめんね。』
そう言って舞台袖に行った。そこにいたスタッフ達がおろおろしていたけど、私は一言謝って制服に着替えた。
社長には、「そうするだろうとは思ってたけどな。黙っててすまなかった。」といわれた。
その後のことは覚えてない。制服に着替えてから体育館には戻ってないし、教室で閉会式をサボってた。体育館から音楽が聞こえてくるけど、聞きたくなくて眠った。


「瑠璃…瑠璃ってば!」
「あれ…?なみ達…閉会式は?」
「とっくに終ったぞ。体育館で姿が見えないと思ったらここでサボってたのかよ。」
「あはは…で?なみとカイは何でそんなに落ち込んでいるの?」
ドンヨリとしたオーラをまとっているカイとかな。お通夜みたいな空気で、正直関わりたくないかも。
「あ~、2年ぶりにサクラが出てきたのにサイン貰えなくて落ち込んでるだけ。他にもいるじゃない。」
そう言えば、教室内のほとんどの生徒がかな達みたいに暗かった。
そこまでの人気だったんだ。それは知らなかった。
「どうでもいいけどね。」
「「「「どうでもいいとは聞き捨てならーん!!!」」」」
どんよりとしていた奴等に思いっきり怒られて、ちょっとびっくり。
その後、サクラについて皆に語られてうんざりしていた。別に知らなくてもいいし。とゆうか自分だからどうでもいいんだけどな。って思っていたから、実際話しは聞いてないよ。
「「「「サイン欲しかったー!!!」」」」
口そろえて言う事かな?
「そんなに欲しい?」
「欲しいに決まってるじゃない!サクラのサインなんて持ってる人はいないのよ?!レア物なんだから!」
「レアなんですか~…=△=」
「顔文字使う癖直したら?」
「面白いからいいでしょ?とゆうか、そんなに欲しいならあげるよ。」
「…は?」
「サイン。欲しいんでしょ?書こうか?」
「いやいや、でもさ…」
「サクラって私だもん。書きましょうか?」
「「…………」」
はい、耳栓の準備完了☆
「「えぇーーーーーーーー!!!!!」」
当たり前の反応だろうけど、凄まじい叫び声だな。お姉さんびっくりだぁ。
指で耳栓してたのにすっごく耳がキンキンするよ;
「何をそんな冗談を…」
「いや、事実だから。」
一体何の得があってそんな冗談を言わなきゃいけないのさ。
「何で黙ってたの?!」
「聞かれなかったから。で?どうするの?」
「「「サインください!!!」」」
「書くもんよこせ。じゃないと書けない。」
大量に集まる色紙やらノートやら、全部で何枚あることやら。想像したくも無い。
サインペンは無いから、マッキーで書けばいいや。さらさらと書いてさっさと帰ろう。
2.3分もあれば終る量だし、ok。うん。
「はい、終った。んじゃ、自分のやつ持って帰ってね。私は帰る。」
鞄を持って椅子から立ち上がった。
「一つだけ聞いてもいい?」
「何?」
「何で2年前からいなくなったの?」
「…嫌になったからだよ。何もかもね。歌うのは嫌いじゃないよ。嫌いなのはあのメンバーだから。色々あって、居場所が無くなった…とゆうか奪われたから。生きる事自体嫌になってたし、でもやけくそな状態で歌は歌いたくなかった。だからやめた。それだけだよ。他に何か?」
「ううん、ありがとう。でも…もうサクラは復帰しないの?」
「…今日限りで終わりだね。本当に引退かな?もう歌わないし、公の場にも出ない。だから、サクラに関する情報流さないで。サインも、もう書かないから。」
それだけ伝えて教室から出て行った。もう嫌だしね…歌は嫌いじゃない、むしろ好きなほう。でも…以前のようには歌えないよ。今日歌って余計に感じた違和感。
2年前のように、楽しく歌えない。何も考えていないで歌ってた頃が懐かしく思えた。
のんびりと家に向かいながら思い出していた。
2年前の事を……―――

=二年前=
まだ何も起きなくて、皆が仲良くて。
何も不安な事すらなくてただひたすら歌う事を純粋に好きだった。
歌っていれば何もかも忘れられるような気がしていたから。
実際、動画とかでアップロードされている歌を、歌ってみたとか替え歌で載せてたのがきっかけでサクラが生まれたようなもの。
顔は隠して、踊ってるところとセットでアップした事もある。
たまたま歌を口ずさんで外を歩いている時に、すれ違ったのが社長だった。
それでスカウトされて入っただけ。喧嘩にも飽きて気まぐれだった。
それでも、受け入れてくれた事だけが嬉しかった。他の人なんかに笑顔を見せることが無かったし、笑う事すらできなかったけど笑う事ができた。
それだけで、とにかく楽しかった。
歌はネットとか、アニメ限定だったけど動画とかでのコメントを見るたびに頑張ろうって思えた。

「ちーっす。」
「やっときたか。」
「遅いですよサクラ、もうすぐ始まりますよ。」
「ごめんごめん。道端にいた猫が可愛くてついね。」
「猫ねぇ、私はサクラの方が断然猫に見えるわよ?」
「どういう意味さ!!」
何も起きないでのんびりとしか時間を過ごすのも悪くないって、このときは思っていた。
このまま過ぎていけばいいって思ってたし、願ってた。でも無意味なんだよね。
そんな儚い願いも叶える事が出来ないんだもん。
全部結局奪われて、やめることになったんだよね。

「今日から入る事になりました。友美李です。よろしくお願いします。」
「「「よろしくー。」」」
「…真面目にやらないなら、俺は認めないから。」
「ちょっと、何言い出すんだよ。」
「俺は、実力で入ってこない奴は嫌いだ。」
一人を除いて、彼女はメンバー入りする事になった。
人は見かけで判断できないって本当だね。可愛い顔して、とんでもない悪魔だった。

「メンバー入りして結構経つけど、馴染んできたね。」
「はい!私サクラさん以上に頑張るつもりです。」
「頑張ってねー。」
「でも、そのためにはサクラさんが邪魔なんです。なので、嫌われてください☆」
「はい?」
笑顔で何言い出してるんだこの子は。
笑顔のまま、カッターを取り出して手首を切った。
「キャーー!!」
「何?!何があったの?!」
「助けてください!サクラさんに手首を切られて…!」
タイミングよく入ってきたメンバーにそう言って、助けを求めた。
ふざけてるでしょこの子、自分で切った癖してやられたとか。
信じないと思ってた、でも無駄みたいね。だって信じてくれなかったんだもん…
「そんなことしないって、てか何でそんなことしなきゃいけないのさ。」
「自分より人気が出たからってこんな事するんですか?!」
「お前は黙ってろよ偽善者気取りかよ。」
「サクラ、今ここで友美李に謝れ。」
「なんで?!やってないしやる意味わかんない!」
「やってないって証拠あるのか?」
「それを言うなら、やったって証拠はどこにあるの?!誰も見て無いじゃん!」
「証拠なら、友美李が泣いてるだけで十分証拠になるだろ?」
「泣いたら証拠になるの?!今まで一緒にいた奴より、新人を信じるの?!」
「いいから、謝りなよサクラ…」
誰一人として信じてくれなかった。それだけでもう絶望感を抱いた。結局は信じてくれる人なんていないって、このときに実感した。
なんだ、結局どこにいても居場所なんてないんじゃん。ならもうどうでもいいや。
「絶対に謝らない、あんたみたいな自己中なんかに謝るくらいならこの仕事やめるほうがましだよ。」
「ならやめたらどうですか?それに、こんなことする人なんかと一緒に仕事をしたくはありません。」
「それに関してはこっちも同じだよ。明日のライブで最後だね。そこで引退するし?じゃぁね。」
荷物を持って事務所を出た。出たところで社長にも会ったけど、結局は社長もあいつらと同じで信じやしなかった。
=ライブ当日=
「今日で最後ね…まぁ構わないけど。」
「ライブ中に友美李に何もすんなよ。」
「はっ、近づきたくも無いね。そんなに心配なら近づけなきゃいいじゃん。」
「てめぇ…!」
「俺は先に行くから。」
控え室から出て、ステージの隅から観客席を見た。満員の観客席をここから見るのが好きだった。曲が始まると同時に、沸きあがる歓声を聞きながら歌うのが大好きだった。でもそれを味わえるのは今日で最後。
「プロデューサー。お願いがあるんですけど…」
「どうした?」
「今日のライブ、観客席で歌わせてもらえませんか?」
「別に構わないが…なんでだ?」
「…ステージであんな奴等と一緒の場所で歌いたくないんです。」
「そうか…それならしょうがないな。許可はするが、条件が一つある。」
「何ですか?」
「精一杯観客を楽しませる事だ。いいな?」
「承知しました。ありがとうございます。」

唯一の味方はスタッフ達だけだった。スタッフ達は仕事上色々な人物を見るので、結構本性などを見透かすのが得意な人達が多い。まぁ、俺の知ってる範囲ではだけどね。
そのためか、あの女の言う事には一切耳を傾けた事はない。
だから、あいつの策略から逃れる事ができたのも皆のおかげだった。
『皆ー!今日はライブに来てくれてありがとう!!』
ライブが始まると同時に、もの凄い歓声が会場を包み込むこれが好き。
『それじゃぁ、今日も張り切っていこう!』