なんやかんやで二日目に入った文化祭。
昨日の大悟君の言葉でちょっと寝不足だった。そんなことは言ってられないんだけどね。今日も大盛況なうちのクラス。全くゆっくり出来ません。
ようやく交代と思う頃にはもうお昼過ぎだった。
今日はのんびりと過ごすからかなたちに言って、単独行動させてもらうことにした。

「あ!瑠璃瑠璃!お好み焼き買ってよ!」
「お~、丁度お腹すいてたんだ!一個頂戴!」
「はいはーい、お好み焼き一人前お持ち帰りで200円です♪」
「はいこれ。」
「まいどあり~!」
お好み焼きを持って、また私は屋上に行った。最近ほとんど屋上に来てるような気がする。屋上の入り口の裏側が日陰になってるから、そこに座ってお好み焼きを食べて寝ようとした。そうしたら、誰かがきた。
「ごめんね、ついてきてもらっちゃって。」
「別に、用件は何?」
「あの、私ずっと鈴木君の事が好きだったの。でも杉原さんと付き合いだしてから言えなくて…でも今付き合ってないから勇気が出たの。私と付き合ってください!」
冷が告白されてる。絵も私には関係の無い事。聞いたダメだと思って音楽を聴こうと思って、ポケットから音楽プレーヤーを取り出した。
「俺…」
冷が何かを言おうとした時、関係ないと思ってたけど何を言うのか気になった。
「誰とも付き合う気はないから。」
「なんで…まだ杉原さんが好きなの?」
「もうあいつは好きじゃない。もう恋愛はしたくないんだ。」
「…わかった。聞いてくれてありがとう。それじゃ…」
女の子は屋上から出て行った。冷は多分まだここに居る。私は身動きが出来なかった。
「恋愛か…もう誰も好きになんかなりたくは無いな…」
そう冷は呟いて屋上から出て行った。
私は、息苦しかった。もしかしたら私のせいかもしれないから。私のせいで冷は…
結局私は周りを不幸にしか出来ないのかもしれない。
『あいつはもう好きじゃない』この言葉が、凄くきつかった。もう冷は私が好きじゃない。そりゃそうだよね、結局は私が突き放したようなものなんだから。でも…凄く悲しかった。
涙が少しづつ流れ出してきた。
私は何がしたかったんだろ?自分の事なのに周りの人を振り回して…
「もう嫌になってきたな、こんな生活。何回こんな事を繰り返さなきゃいけないのかな?」
その場に仰向けになって、空を見上げた。
「ごめんね冷…」
そのまま私は眠った。

=冷サイド=
告白を文化祭にするって奴等が多いから、俺はいつも文化祭はサボる事が多い。でも今年は参加してる。理由は特に無いけどな。
そのおかげで昨日今日とかったるい。
さっきもそれで屋上まで連れて行かれた。
「あれ、かなと大悟が一緒って珍しいな。なみ達は?」
「別行動だけど?」
「へぇ、何かあった?」
「特に何も無いわよ。いきましょ。」
「おっ…おう。じゃな冷。」
「いってら~。俺はどこ回ろうかな。」
だらだらと歩いていたら、今度は健たちと会った。
健になみにカイ…さっき大悟とかなが居て…瑠璃を見ていない。
「瑠璃は?」
「今日は一人がいいって言ってたからいないぞ。」
「そうか、じゃな~。」
また俺は一人になって、これ以上また女子達に捕まるのもいやだから俺は屋上に行った。

屋上に出ると、丁度いい…つか気持ちいい風が吹いていた。空を見上げると、綺麗な青空だ。
体育館から聞こえるバンド演奏とかの音も、ここだとかすかにしか聞こえない。
「気持ちいいなぁ…」
ふと視界の端に見えた、給水タンクみたいなところ。中学の時、瑠璃と初対面の時と同じ風景に見えた。
はしごで上に乗った。屋上から見える風景より少し高くて、少し怖かった。
ここで仰向けになって空を見ると、手が届きそうだった。
ボケッと見上げたまま少し時間が過ぎた。
ウトウトと眠くなってきた時、携帯の着信音みたいな音が聞こえて驚いた。
「はい。…曲の収録ですか?…はい、はい…は?シークレットライブ?どこで?」
声に聞き覚えがあって、ゆっくりと下を見た。そこに居たのは瑠璃だ。いつからここにいた?
「はい、えぇ…まぁ確かに企画されてましたけど…私が?!なんで…ちょっと!……切りやがった…」
出るに出られない状況になってしまった。
携帯を開いて時間を確認した。
時刻は16:35…もうすぐ終わりか。
携帯を閉じた瞬間、俺の携帯にメールが届いて音楽が鳴ってしまった。
「誰?!」
「っ…俺だよ。」
ごまかしが聞かないから、俺は諦めて上から飛び降りた。
瑠璃は驚いて目を大きく開いた。けど、なぜか俺と目線をあわせてはくれなかった。
その理由が俺にはわからなかった。
「何でここに居るの?」
「あ~…女共がうるさいから。瑠璃は?」
「寝不足だったから…」
「珍しいじゃん、瑠璃が寝不足なんて。」
「ちょっと色々昨日あったから…」
会話はしてくれるけどやっぱり視線は合わせてくれなかった。
「昨日?何かあったのか??」
「冷には関係ないよ。」
関係ない…か…確かにそうだけど、ちょっと苦しくなった。
「そうだな、でも何かあったら頼れよ?」
「…友達として…でしょ?」
「は?」
「もう名前で話しかけないでよ。私ももう名前で話しかけないから。」
「なんでだよ…」
「もう必要以上に関わらないで。」
「理由は何だよ!」
「もう嫌なの。好きでもない人に名前で呼ばれたくない。」
俺の目を見ないで瑠璃はそういった。
俺は何か瑠璃に嫌われるようなことしたのか?
「なんでだよ。俺何かしたか?」
「してるでしょ?誰も助けてとか言ってないのに、叔父様の家まで押しかけてきたりして。それにいつもしつこいと思ってたの。冷と付き合ってた時も何も楽しくなかった。楽しいと思ったことなんて一度も無い。そんな人に名前で呼ばれたくないの。理由はそれだけだよ。何か文句ある?」
瑠璃の言う言葉が衝撃的過ぎて、何も言う事はできなかった。それ以上に、俺は少なくとも付き合ってたときは冷たくしていたと思うけど瑠璃の事は好きだった。楽しいと思うときもあった。でも瑠璃は違った?俺の行動は全部迷惑だった?俺の視界がだんだんと暗くなっていくような気がした。
「それじゃ、そういうことだから。」
瑠璃は立ち上がって、俺の横を通り過ぎて屋上から出て行った。俺は一歩も動けなくて、ただそこに立ち尽くしていた。
「…嘘だろ?…俺のした事は無駄だったのか?」
俺瑠璃の叔父さんとの約束を思いだした。
『小僧、わしの家にまで乗り込んできたからには二度と瑠璃を傷付けるんじゃないぞ。今の瑠璃は小僧の言葉で、感情が左右されているみたいだしの。信じがたいじゃろうが…うかつな事を瑠璃に聞かれないようにしろよ。』
学校に送ってもらった時に、叔父さんに言われた事だ。もしかしたら、俺がここで告白されてた時にはいたのかもしれない。
そうだとしたら、俺のあの言葉を聞いていたって事だよな。
どう訂正するべきか…
それ以上に、俺はどうしたら言いのかわからない。

また俺達はすれ違った。その状況で文化祭二日目は終った。